2017年5月20日21日、明治大学駿河台キャンパスにおきまして、第37回日本記号学会「モードの終焉?デジタルメディアとファッション」を開催致しました。「衣服は書かれてモードになる」とし、マスメディアであるファッション雑誌の記号学的分析を行ったロラン・バルトの『モードの体系』出版から50年を経て、当時は想像もしなかったであろう双方向メディアであるデジタルメディア、SNSが発達する現代の流行としての「衣服」すなわちファッションの形成と伝達について、メディアとの関係から議論を繰り広げました。
第一日目、佐藤守弘会員の司会で進められた第一セッション「紙上のモードー印刷メディアと流行」では、平芳裕子(神戸大学)氏が「ファッション誌の技法——イメージ/ことば/設計図」について、小林美香(東京国立近代美術館)氏が、「ファッション雑誌と女性の身体表象」について、また私高馬は、「モード(Mode)を構築・伝達する言説」について報告しました。これらの報告を通して、19世紀から20世紀にかけてのファッション・プレートやパターンと20世紀初頭からのファッション写真というイメージ、そして1970年代以降の雑誌におけるテクストという三点から「紙上のモード」を再考するとともに、デジタル化によって何がどのように変わっていくのかについてディスカッサントに成実弘至(京都女子大学)氏を迎えながら議論が繰り広げられました。
大会二日目、第2セッションのストリートの想像力<HARAJUKU/SHIBUYA>では、「東京のストリート」に注目し、寄り添い続けてきたメディア『ACROSS』の編集長である高野公三子氏が、原宿、渋谷の「定点観測」として記録してきた貴重な『ACROSS』の資料である数々のスナップ・ショットを1990年代を中心に紹介し、聞き手である水島久光会員と高野氏の議論を通して、半世紀に及ぶ街のクロノロジーとカルチャーの配置・転換の「読み解き」が行われました。
第3セッションの「デジタルメディア時代のファッション」では、須藤絢乃(アーティスト)氏が「様々なメディアやテクノロジーと結びついたセルフイメージ構築/消失実践」について、大黒岳彦(明治大学)氏が「ネットワーク社会において「記号」とは何であり得るか?」について、また、吉岡洋前記号学会会長(京都大学)がデジタルメディア環境の根底をなす「透過性」や「非-存在」という観点から「ファッションはデジタルメディアを待っていた」について考察をご報告いただき高馬が司会を務めましたが、デジタルメディア時代のファッションとはいかなるものかについて、各報告後、室井尚元記号学会会長をはじめとするフロアとの活発な議論が繰り広げられました。
会員皆様のお力添えもあり、会員、非会員あわせて両日で140名の来場者を迎えての大会となり、前川修会長の閉会の辞をもって盛会のうちに大会を無事終えることができました。本大会では、私自身もかねてから考えてきたデジタルメディア時代のファッション(服飾流行)とは何なのかをご登壇者の皆様のご報告のおかげで通史的、かつ様々な視点から議論する機会を持てましたことを心よりお礼申し上げます。本大会の詳しい内容は次次号の学会誌で報告させていただきたいと思います。会員の皆様、運営準備から開催までいろいろお力添え頂きましてありがとうございました。
高馬 京子 (明治大学)