日本記号学会第45回大会
繭の記号論── 技術をめぐる
倫理・芸術・哲学
倫理・芸術・哲学
2025年7月5日(土)・6日(日)
会場:情報科学芸術大学院大学[IAMAS]
(ソフトピアジャパンセンタービル)
https://www.iamas.ac.jp/access/
学会員・非学会員問わず当日現地でどなたでも自由に参加できます【非学会員参加費:1,000円(※学部生以下無料)】
(ソフトピアジャパンセンタービル)
https://www.iamas.ac.jp/access/
学会員・非学会員問わず当日現地でどなたでも自由に参加できます【非学会員参加費:1,000円(※学部生以下無料)】
開催にあたって
大会実行委員長:大久保 美紀(IAMAS)
概要
日本記号学会第45回大会では「繭の記号論」と題して、「技術」をめぐる問いを「倫理」「芸術」「哲学」という三つの観点から議論します。「技術」をテクノロジーの側面からだけでなく、テクネーや芸術を含むアート、また西洋近代技術の枠組みでは捉えきれない多元的なものとして再認識する契機となれば幸いです。
「繭」はE.コッチャによれば「生まれた後の卵」であり、近代以降の技術観を転覆させる脱人間的な新しい技術への視座の足がかりとなります。B.スティグレールの技術論にインスピレーションを受けた小説家A.ダマジオは現代世界の状況をTechno-Cocon(テクノロジーの繭)と表現しました。「繭」は、絹織物産業を支える養蚕業を通じて、昆虫の技術が人間の技術と結びついて文明があることを確認させてくれます。「繭」を切り口として技術を問うことで、私たちは技術を新たに考えることができるに違いありません。
技術をめぐる倫理・芸術・哲学
今日の世界では、人工知能の台頭に言及するまでもなく、技術の道徳性が喫緊の問いであるにもかかわらず、この問題は十分に議論されていません。技術は私たちを助け、癒し、繋ぐというケアの役割を担うと同時に、私たちの道徳的判断に深く介入しているのです。
そして、技術としての芸術をいかに考えるかという問題も重要です。本大会の会場である情報科学芸術大学院大学[IAMAS]は科学的知性と芸術的感性の融合を建学理念に掲げ、最新の科学技術を吸収する先端的な芸術表現に取り組んできました。一方、メディアアートをめぐる状況は大きく変化し、一つの転機というべき局面を迎えています。芸術は伝統的に人間に固有の表現と考えられてきましたが、それは同時にエコロジカルな視座を私たちに与えてくれます。メディアアート、AIによるアート、バイオアートの実践は、技術について新たな考えを私たちにもたらすのでしょうか。
最後に、先端技術の発展は人間と機械をめぐる議論を精緻化させました。一般器官学、セカンドオーダー・サイバネティクス、ポスト現象学、アクターネットワーク理論といった、異なる学問領域を越境する議論を踏まえて考察することによって、そこには新しい技術哲学が創発されつつあるように思われます。ユクスキュル、ハイデガー、スローターダイクらの提示する世界モデルの本質にある技術理解を再検討するとともに、コッチャの「繭」概念を新たな文脈へと接続する可能性を検討します。
開催にあたって
大会実行委員長:
大久保 美紀(IAMAS)
概要
日本記号学会第45回大会では「繭の記号論」と題して、「技術」をめぐる問いを「倫理」「芸術」「哲学」という三つの観点から議論します。「技術」をテクノロジーの側面からだけでなく、テクネーや芸術を含むアート、また西洋近代技術の枠組みでは捉えきれない多元的なものとして再認識する契機となれば幸いです。
「繭」はE.コッチャによれば「生まれた後の卵」であり、近代以降の技術観を転覆させる脱人間的な新しい技術への視座の足がかりとなります。B.スティグレールの技術論にインスピレーションを受けた小説家A.ダマジオは現代世界の状況をTechno-Cocon(テクノロジーの繭)と表現しました。「繭」は、絹織物産業を支える養蚕業を通じて、昆虫の技術が人間の技術と結びついて文明があることを確認させてくれます。「繭」を切り口として技術を問うことで、私たちは技術を新たに考えることができるに違いありません。
技術をめぐる倫理・芸術・哲学
今日の世界では、人工知能の台頭に言及するまでもなく、技術の道徳性が喫緊の問いであるにもかかわらず、この問題は十分に議論されていません。技術は私たちを助け、癒し、繋ぐというケアの役割を担うと同時に、私たちの道徳的判断に深く介入しているのです。
そして、技術としての芸術をいかに考えるかという問題も重要です。本大会の会場である情報科学芸術大学院大学[IAMAS]は科学的知性と芸術的感性の融合を建学理念に掲げ、最新の科学技術を吸収する先端的な芸術表現に取り組んできました。一方、メディアアートをめぐる状況は大きく変化し、一つの転機というべき局面を迎えています。芸術は伝統的に人間に固有の表現と考えられてきましたが、それは同時にエコロジカルな視座を私たちに与えてくれます。メディアアート、AIによるアート、バイオアートの実践は、技術について新たな考えを私たちにもたらすのでしょうか。
最後に、先端技術の発展は人間と機械をめぐる議論を精緻化させました。一般器官学、セカンドオーダー・サイバネティクス、ポスト現象学、アクターネットワーク理論といった、異なる学問領域を越境する議論を踏まえて考察することによって、そこには新しい技術哲学が創発されつつあるように思われます。ユクスキュル、ハイデガー、スローターダイクらの提示する世界モデルの本質にある技術理解を再検討するとともに、コッチャの「繭」概念を新たな文脈へと接続する可能性を検討します。
プログラム/タイムテーブル
1日目【7/5(土)】(会場:特記する一部を除いて 4階 ホールA)
10:00 |
10:00
受付開始・展覧会開幕
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10:20〜11:30 |
10:20〜11:30
学会員/非学会員による研究発表①(4階 C412 及び 4階 ホールA)
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11:30〜12:20 |
11:30〜12:20
(ランチタイム)
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12:20〜14:40 |
12:20〜14:40
学会員/非学会員による研究発表②(4階 C412 及び 4階 ホールA)
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15:00〜15:20 |
15:00〜15:20
問題提起 (大久保 美紀) |
15:30〜17:30 |
15:30〜17:30
第1セッション
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セッション概要 超音波検査機のような技術的対象がわたしたちの道徳的判断に重大な影響を与える—フェルベークがそのような主張をしてから、すでに長い時間が経過している。その後さまざまな論者が、技術的対象と道徳との関係について議論してきた。
本セッションでは、『ケアするラジオ: 寄り添うメディア・コミュニケーション』(さいはて社・2024年)の著者で、メディアテクノロジーにおけるケアの倫理の可能性に関する実践・研究を続けている金山智子氏(情報科学芸術大学院大学[IAMAS])、そして、来週7月11日に、『ロボットからの倫理学入門』をバージョンアップして出版される『AI・ロボットからの倫理学入門』(神崎・佐々木・本田との共著・名古屋大学出版会・2025年)の著者で、ウォラック&アレン『ロボットに倫理を教える—モラル・マシーン』(岡本との共訳・名古屋大学出版会・2019年)の翻訳やELSIに関連する幅広い活動でも知られる久木田水生氏(名古屋大学)をスピーカーにお招きし、それぞれの立場から、技術と倫理・道徳との関係についてお話いただく。最後に記号学会から秋庭史典(名古屋大学)が、TactileologyとAlgorhythmicsの立場をもとに、技術と倫理の関係について述べる。 本大会最初のセッションとして、まずはさまざまな論点を示しながら間口を広げ、多様な議論を喚起することを目指したい。
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17:30~18:00
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17:30~18:00
「共食ワークショップ」(平塚 弥生)
〔参加希望者のみ・4階 ホールB〕 |
18:30~20:30
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18:30~20:30
懇親会・展覧会(展覧会は17:30~)
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2日目【7/6(日)】(会場:特記する一部を除いて 4階 ホールA)
9:30
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9:30
受付開始
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10:00〜12:20 |
10:00〜12:20
学会員/非学会員による研究発表③(4階 C412 及び 4階 ホールA)
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13:00~13:30
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13:00~13:30
会員総会
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13:40〜16:00 |
13:40〜16:00
第2セッション
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セッション概要 本セッションでは、「繭」という概念を入り口に、メディアアートやバイオアートがたどる生成と変容のプロセスを「失敗」「摩擦」「持続」という観点から再検討することを目指す。まず石橋氏がバイオアート作品を通じて、プロトタイプに内在する失敗の可能性と生きた素材が生み出す摩擦を創造のための推進力へ転化することを示す。続いて小林氏が1996年制作の初期ネットアート作品《Light on the Net》の2024年再制作プロジェクトを手がかりに、通信遅延の調整過程で生じた時間的摩擦をベルクソンの「持続」の概念と結び付け、「未完了相」が開く経験の地平を論じる。最後に原島氏が人間中心主義的「多様性」概念を批判的に乗り越える「情報学的転回」の観点から、AIアートと技術多様性を惑星的視座へ拡張し、局所的な実践が地球規模の転換へと拡がる世界観を描き出す。
三者の報告を接続することで、既存の技術的・美学的枠組みに内在する制約や限界との「摩擦」から生まれる創造性を浮き彫りしたい。その摩擦こそが新たな表現や認識を生み出す推進力となり、「繭」という変容のうつわとしてのメディアテクノロジーが、失敗や遅延、さらには根源的な世界観の転換を通じて開かれる「メタモルフォーゼ」の可能性を探りたい。
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16:10〜17:30 |
16:10〜17:30
第3セッション
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セッション概要 第3セッション「繭のソフィア:混合、共感、転生の哲学」では、先端技術によって刷新されつつある世界像を背景に、「繭」という比喩を通して存在・感覚・技術・死生観を再考する。サイバネティクス、ポスト現象学、アクターネットワーク理論、一般器官学といった理論の横断的展開が可能となった今、ユクスキュル、ハイデガー、スローターダイク、コッチャらが描く世界モデルの根幹には、技術を媒介とした存在の編み直しが見出される。本セッションでは、吉岡洋が「転生」という観念の哲学的合理性に注目し、繭のイメージが現代の物質主義的死生観に与える不穏さを手がかりに、自己と世界の連関を問う。一方、大久保美紀は、コッチャのメタモルフォーゼ論を軸に、技術・芸術・倫理を貫く思考装置としての繭を論じ、共感・転生・混合を通じた新たな技術哲学=宇宙論の構築を試みる。「繭」のコスモロジーを通じて、技術と生命の関係を根本から捉え直し、新たな技術哲学を拓く挑戦である。
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17:30〜18:00 |
17:30〜18:00
総括 |
研究発表・分科会の詳細(会場:共にソフトピアジャパンセンタービル4階)
学会員/非学会員による研究発表①【7/5】
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学会員/非学会員による研究発表②【7/5】
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学会員/非学会員による研究発表③【7/6】
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展覧会「繭の記号論: 技術をめぐる倫理・芸術・哲学」
- 日時: 2025年7月5日(土)・6日(日)
展示コアタイム
7月5日 10:00-15:00, 17:30-20:00
7月6日 9:30-13:40, 18:00-19:00
(※企画セッション開催時間をのぞく)※林晃世《足の裏ガムラン》演奏時間:
7月5日(土)11:40〜、18:10〜(4Fコンピュータ室) - 場所: 情報科学芸術大学院大学(ソフトピアセンタービル3F・4F)
- 無料:(※学会に参加する場合は要学会参加費)
- 主催: 日本記号学会
企画: 大久保美紀(日本記号学会第45回大会 実行委員長)
助成: 公益財団法人吉野石膏美術振興財団、公益財団法人ポーラ美術振興財団
協力: 情報科学芸術大学院大学、art-sensibilisation、IAMASプロジェクト「テクノロジーの〈解釈学〉」 - 参加作家: 石橋友也, 上松大輝+水島久光+椋本輔, 杉浦今日子, 瀧健太郎, 西脇直毅, 林晃世, 平瀬ミキ, 福島あつし, 藤幡正樹, 宮沢らも, Jean-Louis BOISSIER, florian gadenne + miki okubo, Yukichi INOUÉ, IAMAS学生有志(兒島朋笑、中岡孝太、中村駿)
- 関連イベント
平塚弥生による「共食ワークショップ」7月5日17:30-18:00