年の瀬の寒さが身にしみる季節になりましたが、会員の皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
4月のニューズレターでは、「夏開催」と告知した今年度の大会でしたが、11月に延期したうえでなんとか開催することができました。現地参加者数は前回ほどには伸びませんでしたが、昨年と同様に、濃密な議論を行うことができました。オンライン/対面のご参加、ありがとうございました。
もう2年弱になるコロナ禍において、大多数の学会では早々とオンライン開催を決定する趨勢があります。そんな中、記号学会は今年も対面開催にこだわりました。それは、対面での会話において漂う空気感、あるいはそこで生じるふとした仕草や身振りや声のグラデーションなど、そうした雑多な要素こそが、コミュニケーションを生成的にするための必須条件だと考えたからです―発表の合間などのちょっとした余地に何気なく交わす言葉も、学会では実に重要な思考の発火点になります。こうした些細で重要なものがオンライン開催では削ぎ落とされてしまう…、昨年の対面(ハイブリット)での大会でそう痛感いたしました。ともかくこうした状況下にもかかわらず、生命をめぐる2度の対面の大会を無事終えることができました。
さて、2期にわたる会長任期ももう少しで終わりになります。会長になってから、賭け、ファッション、食(メシ)、アニメーション、そして昨年今年と生命についての大会2回と、多彩なテーマで大会を開催してまいりました。毎回、実行委員長を中心に、理事会で企画を何度も練りなおし、大会全体のストーリーを組み立てていく作業は、大変ではありました。しかし、これほど学会らしい学会はおそらく日本記号学会しかないのでは、という思いも抱いております。これは、共通テーマとは名ばかりの、各々が言いたいことだけを言うだけの顔見世興行的な学会大会などとは一線を画した、本学会の優れた特徴です。
こうした、外部に対して開かれた、風通しのよく、ドラマティックな学会を、今後も陰ながらサポートしていきたいと考えております。会員の皆様方におかれましても、引き続きご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
前川 修 (近畿大学)