日本記号学会 第45回記号大会「繭の記号論:技術をめぐる倫理・芸術・哲学」が、2025年7月5日(土)・6日(日)、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]で開催されました。本大会は、科学的知性と芸術的感性の融合、領域横断研究の拠点である情報科学芸術大学[IAMAS]を会場に、今日喫緊の課題である技術の問いを多角的に議論する試みであり、そのための一つの切り口として、技術に関する慣習的な考えを新たにしうる「繭」という思考モデルを通じて、記号学を軸に領域横断的な学問的発展に貢献することを目指しました。
大会は、テーマに関する三つのメインセッション、学会員・非学会員の研究発表、テーマに関する作品を紹介する展覧会から成りました。メインセッションは、実行委員長による問題提起に続き、「繭のエティカ:テクノロジーとケア、ヒューマニズム」(金山智子、久木田水生、秋庭史典)で幕を開けました。翌日は「繭のアルス:先端技術とメディアアートの行方」(石橋友也、小林茂、原島大輔、植田憲司)および、「繭のソフィア:混合、共感、転生の哲学」(吉岡洋、大久保美紀)の二つを開催しました。学会員・非学会員の研究発表では、学会史上最多の20名による研究発表が行われました。展覧会「繭の記号論:技術をめぐる倫理・芸術・哲学」では、《IAMAS ARTIST FILE #10 繭/COCOON 技術から思考するエコロジー》展より石橋友也、Jean-Louis BOISSIER、西脇直毅、florian gadenne + miki okubo、《石に話すことを教える:生きるという〈わざ〉》より Yukichi INOUÉ、杉浦今日子、招待作家として平瀬ミキ、福島あつし、藤幡正樹、学会員から上松大輝+水島久光+椋本輔、瀧健太郎、林晃世、宮沢らも、さらに IAMAS 学生有志が参加しました。 また、IAMASの平塚弥生が「共食ワークショップ」を行いました。大会全体の来場者数は120〜130名と多くの方に参加いただきました。
本大会では、道徳とケア、メディアアートやバイオアートを含む芸術実践とその批評をめぐり、生命論・情報学・哲学・美学という異なる立場から、技術について多角的に思考することができました。その点では、異なる学術領域を架橋する新たな議論のための足掛かりを築き、上述の目的を達成できたと思います。また、活発な研究発表の状況は、新たな記号論をめぐる挑戦的研究の議論の場として本大会が機能したことを明らかにしています。秋庭会長により充実したレポートを執筆いただいたので、そちらも参照いただけると幸いです(https://www.iamas.ac.jp/report/semiotics-of-the-cocoon/)。また大会後には、ここでの議論を引き継ぐ研究会が開催されつつあります。本大会の成果が、領域横断的な記号学研究のための新たな協働を引き起こし、記号論のさらなる発展に寄与することを期待します。「繭」は単なるメタファーでなく、精緻で洗練された研究の萌芽となるに違いありません。
最後に、本大会の開催にあたり、懐の広い応援と力強い助言をくださった学会員の皆さんに心からお礼申し上げます。
大久保 美紀(大会実行委員長・情報科学芸術大学院大学[IAMAS])



