(リトアニア)ヴィタウタス・マグナス大学
日本学研究センター
高馬 京子
「グローバル化と電子メディアの影響のもと拡大するイメージ化された諸自己やイメージ化された諸世界が、私たちの認識や行動基準として大きな力をもつようになった」 現代において、「日本」を理解するためには、自己の視線からだけではなく、外国という他者の視線からも「日本」を研究する必要なのではないだろうか。また、不変的であると同時に可変的でもある「イメージとしての日本」を把握することは、学術的のみならず社会的にも日本と諸外国の異文化理解を推進することにもなるのではないか。
このような問題意識の下、2009年10月15,16日に、筆者が勤務するヴィータウタス・マグヌス大学日本学センター(リトアニア・カウナス)では、国際交流基金助成プログラムとして、国際シンポジウム『イメージとしての日本―日欧の交差する視点』を開催した。当センターでは、同テーマについて2007年、2008年と東芝国際交流財団助成プログラムとしてシンポジウム及び成果出版を発表し続けており、同テーマでシンポジウムを開催するのは、本年度で3回目となる。開催前日は10月中旬にも関わらず、北の国リトアニアでさえもまれにみる初雪と突風に見舞われ、海外からの参加者の来リが心配されたが、シンポジウム当日は雪もやみ、無事シンポジウムを開催することができた。開会式では、このシンポジウム開催を応援してくださったリトアニア在日本大使館の明石美代子大使から、また、日本からもインターネットを通して、当シンポジウム学術委員会のメンバーの一人である大阪大学北村卓教授からも激励の言葉を頂いた。
シンポジウムでは、2日にわたり、日本、アメリカ、欧州各国(イギリス、エストニア、オーストリア、スエーデン、ドイツ、フランス、ラトビア、リトアニアなど)から集まった発表者計20名によって、同テーマについて様々な国の観点、分野からの議論が繰り広げられた。日本記号学会からも池上嘉彦教授、兵庫県立大学小野原教子准教授らが現地参加して下さった。また、インターネットを通して記号学会会員である池田淑子氏にもご参加頂いた。シンポジウムは池上教授、ウィーン大学セップ・リンハルト教授、岡山大学中尾知代准教授、オハイオ大学のアルギス・ミツクーナス教授らがチェアマンを引き受けて下さった4つのセクション(メインテーマはそれぞれ「ことば、言説を通してみるイメージとしての日本」「芸術におけるイメージとしての日本」「物語(文学、映画)におけるイメージとしての日本」「宗教、政治的観点からみたイメージとしての日本」)から構成され、学際的、国際的な視点から、多角的に日本のイメージについて議論を行うことができたのは大変有意義なことであった。この場をお借りして、助成してくださった国際交流基金、参加して下さった皆様、残念ながらお越し頂けなかったが学術委員としてご支援頂いたヨーロッパ日本研究協会会長ハラルド・フース教授、パリ第7大学セシール・坂井教授、また、この情報を告知して下さった日本記号学会の皆様に心よりお礼申し上げたい。本シンポジウムの結果論集は、2010年3月に発刊予定である。
(詳細プログラムは、http://www.viduje.lt/?q=node/2705からダウンロード可能)
*1 伊藤公雄『イメージとしての<日本>05 海外における日本のポピュラー受容と日本研究の現在』、大阪大学21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」2006年、p.2