日本記号学会(情報技術とプラグマティズム研究会)× 日本コミュニケーション学会・連続ジョイントオンラインセッション
「VTuberの記号論――コミュニケーションの指標的分析をめぐって」
※本セッションは、5月20日に開催される「戦争をめぐるヴァーチャルな記録と倫理の記号論」 との連続セッションです。
日時:2025年5月13日(火) 19:00 – 20:45[予定・若干延長有]
開催形態:オンラインセッション(Zoom予定)
参加方法:(⇒文末)
自己をめぐる問いは他者をめぐる問いと結びついており、他者をめぐる問いは、他者がどのように現われるかをめぐる問いと切り離せません。そして他者がどのように現われ、また他者に対して自己がどのように現われるのかをめぐる問いは、その現われを可能とする技術的条件をめぐる問いへと接続していきます。配信者の身体とリアルタイムで連動するヴァーチャルなアバターが、動画配信プラットフォーム上に現われることで可能となるVTuberという存在は、自己と他者、そしてその間で生み出されるコミュニケーションやコミュニティの成立をめぐって本質的な問いを提起しているように思えます。
VTuberをめぐっては、山野弘樹『VTuberの哲学』や岡本・山野・吉川編『VTuber学』といった書籍の刊行など、その新たな現象を学術的な議論の俎上に乗せる動きが広まっています。本セッションでは、日本記号学会と日本コミュニケーション学会のジョイントセッションとして、VTuberをめぐって記号とコミュニケーションという二つの視点の交差という観点から検討していきます。出発点となるのは、チャールズ・サンダース・パースの記号論です。パースの記号論は、イメージ(類像)、インデックス(指標)、シンボル(象徴)の記号の三タイプを区別することで、記号の多様な現われや機能を分析する視座を切り開きました。このパースの記号論は、配信者とヴァーチャルなアバターが相互に浸透しあうことでコミュニケーションのエージェントとなるVTuberという多元的な存在に光を当ててくれるはずです。
パースの記号論という概念的道具を、VTuberのコミュニケーションという事例に適用していくための補助線となるのが、社会言語学における指標性の概念です。社会言語学では、社会的なコミュニケーションの場における自己の定位(その場において私は誰であるか)や他者との関係の定位(わたしたちはどのような関係を結ぶのか)のダイナミズムを捉えるための概念として、パースに由来する指標の概念を発展させてきました。この指標概念に依拠することで、VTuberが実践するコミュニケーションを記号論的に分析する可能性が見えてくるはずです。
本セッションでは、上記の『VTuber学』にも寄稿している分析美学を専門とする松本大輝さんをコメンテーターにお迎えして、VTuberの記号論の可能性をめぐって議論します。VTuberをめぐる問いは、VTuberを自然に受け入れることができてしまう我々をめぐる問いでもあります。そしてその先には、生成AIベースのエージェントとのコミュニケーションが当たり前の光景になっていくであろう未来の私たちをめぐる問いが横たわっているはずです。VTuberから出発して私たちはどこまでいけるのか、ぜひ多くの人に議論の場に加わって欲しいと願っています。
【登壇者】
司会・報告者:谷島貫太(二松学舎大学:記号論/技術哲学)
コメンテーター:松本大輝(東京大学:分析美学)
https://forms.gle/NKr7fvyHSnXTv8Z8A
日本記号学会:情報技術とプラグマティズム研究会
(共同幹事:加藤隆文・谷島貫太・椋本輔)