入梅の候、会員の皆様におかれましてはお元気でお過ごしのことと存じます。
吉岡洋前会長からバトンを引き継ぎ、新たに会長に指名された前川です。2010年から今年まで二期ほど編集委員長をつとめ、今期は会長という重責を担うことになりました。
おそらく年齢から考えれば私は、記号論/記号学ブームを直接体験した最も下の世代なのかもしれません。学部時代からともかくわけもわからず記号学の本を読みあさり、結果として、私自身がその後、大学院を経て研究を志す際に影響を受けたものの考え方は、記号論にあるということもできます。そうした経緯もあり、今回の会長指名には、身の引き締まる思いがいたします。
ここ数年、日本記号学会は、多くの問題を抱えています。まず深刻な財政問題があります。小規模な組織ゆえ、学会費納入が滞ると学会運営に直接影響が出てしまいます。また、この問題が間接的要因ともなっていますが、学会誌の刊行遅れを正常化できていないという問題があります(一昨年の大会特集をもとにした『ハイブリッド・リーディング(仮)』の号はこの夏の刊行になります)。さらには、活発に活動されている学会員の成果を集約して広報する活動も滞っています。そして、中堅、若手の研究者たちへと会員を拡充する活動もまだゆっくりとしたペースで展開するに留まっています。こうした問題をひとつずつ着実に解決することが、これから三年間会長に課せられた宿題と考えています。
そのために今期は、理事会を含むスタッフには比較的若いひとたちに加わっていただきました。また、これまで学会を支えてくださった会員の方々にも引き続きご協力をお願いしております。若手とベテランの双方の知恵と力を合わせて問題を解決していきたいと思います。
とはいえ、学会自体は、毎年刺激的なテーマを組み、他の学会では考えられないような大会が毎年開催されています。本学会が他の学会と一線を画しているのは、学域や学閥にも、研究者/実践者の区別にもとらわれない、本来的な意味で横断的な学会だという点かもしれません――今回、檜垣会員を実行委員長として開催された賭博がテーマの大会もその一例でしょう。従来の学会のようなルーチーンではなく、そのつど新たにお祭りのように、異分野、異業種のひとびとが交錯し合う、そうした大会の特色は今後も引き継いでまいります。
会員の皆様にはこれまで以上にご協力とご理解をお願いいたします。
前川 修 (神戸大学)